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  • 執筆者の写真Kimie

秋に土作りをする自然農法

更新日:2018年11月27日


人工的な農薬や肥料を使わない有機栽培の野菜を作るには、時間がかかります。けれど家庭菜園ならば、じっくり時間をかけて、のんびり畑作りを楽しむくらいが丁度いい。片手間で充分。大量に収穫しなくても構いません。雑草も肥料として使ってしまう自然農法なら、草取りの手間もいりません。秋に始める土づくりさえ一度やっておけば、来年の春から菜園を始められます。

秋に始める土づくり


土づくりを始めるために用意しておくものは、

・もみ殻燻炭 ・酢 ・ススキなどの枯草 ・枯葉 ・米ぬか ・枯れ枝や竹


ステップ1 畑の場所を決める


野菜を植えるための「畝」は幅50cmくらい。畝と畝の間に70cmくらいのスペースを開けて、歩いたり作業する場所を確保します。


この時に畝の方向を決めておきます。傾斜のある場所なら、傾斜に沿って畝を作ってしまうと水が下へ流れてしまうので、傾斜に対して垂直方向へ畝を作るほうが均一に水や養分が野菜に行きわたります。


平坦な場所なら、どちらの方向へ畝を作っても構いませんので、南北方向へ畝を作ると全体に日が当たります。


畳1枚くらいの小さなスペースでも家庭菜園なら十分です。菜園の周囲にレンガや石を敷き並べてもいいですし、目印になる棒を4隅に突き立てておくだけでもOK。



ステップ2 土を耕す


畑を作る場所を決めたら、まず土を掘り返して、土の中に空気を入れます。自然農法では石も土のかたまりも、そのままにしておきます。植物の根が伸びる時に邪魔になりそうな大きな石を取り除く程度です。


畑の端から、まずスコップを地面に突き刺し、持ち手の部分をグッと自分のほうへ引き倒し、掘り起こした土を通路部分へ置きます。

後ろへ下がって同じように土を掘り起こして横へ土を置き、深さ30cmくらいの溝を作っていきます。



ステップ3 土の環境を整える


掘り起こした溝の底に、もみ殻燻炭や枯草などを敷いておくと、微生物が集まり野菜が育ちやすい環境を整えてくれます。


まずは、もみ殻燻炭を土が隠れるくらいに薄く撒き、醸造酢を水で100倍に薄めて振りかけておきます。


次に枯れた雑草を敷きます。ススキ、ムギ、ソルゴー、セイタカアワダチソウ、ヨシなど、茎に空洞がある細長い雑草が適しています。

これらの雑草が近くに生えていれば使えますが、なければ緑肥として種が売られていますので、植えて置いて使います。


雑草を敷いた上には枯葉を敷き、その上にまた雑草を敷き、米ぬかをまいて、もみ殻燻炭をまき、水で100倍に薄めた酢をたっぷりとまきます。


ここまで出来たら、掘り起こして出しておいた土を戻してかぶせ、かまぼこ型にすれば畝のできあがり。土が乾かないよう、表面にススキなどの雑草をかぶせておきますが、雑草が風邪で飛ばないよう、木の枝や竹などをのせておきます。




ステップ4 病害虫を防ぐ


畝のところどころに、ネギの苗を植えておくと病原菌を抑えられます。


通路や菜園の周囲には、ソルゴーを植えておくとアブラムシなどの害虫がソルゴーに付き、そこへテントウムシなど害虫の天敵となる虫が集まってくるので、野菜に害虫が付くのを防ぐことが出来ます。



ここまでを秋にやっておけば、あとは春を待つだけ。土を耕すのも、この最初だけです。

生えてきた雑草は地上部分だけ刈り取って根を残し、収穫した後の野菜の根もそのままにしておくと、自然と微生物が分解して堆肥となっていきます。



苗の植え付け


小さな鉢で育てた苗は、土に植える前に300倍に薄めた醸造酢に浸けて底穴から吸水させることで微生物を活性化させます。こうしておくと根付きがよくなります。


秋に畝づくりをして、春に野菜の苗を植え付ける時には、表面の乾いた土と、その下の湿った土を分けて掘り起こすのがコツです。


鉢から出した苗を穴に入れ、湿った土で隙間を埋めるようにし、乾いた土は入れないようにします。そうして植え付けたら周囲の土を手で押さえておくだけで、水やりはしない。そのほうが土が硬くならず、土中に十分な酸素があるので根付きやすくなります。



季節に合わせて野菜を植える


トマトは南米が原産の作物で、白菜は中国が原産。野菜は日本以外からもたらされたものが多いので、原産地の気候に合わせて植えたほうが自然に育ちます。


・西アジア原産:白菜、玉ねぎ

・地中海沿岸原産:キャベツ、ブロッコリ、

・南アメリカ原産:イチゴ

・中央アメリカ乾燥地原産:カボチャ

・中南米の砂漠周辺原産:ズッキーニ

・中南米の乾燥地原産:サツマイモ

・南アンデス高地原産:トマト

・アフリカ砂漠周辺原産:スイカ

・インド東部の熱帯原産:ナス

・インドのヒマラヤ山麓原産:キュウリ


これらの野菜は種から育てることも出来ますが、家庭菜園では苗を買ってきて植えたほうが失敗が少ないはず。


・春(2月下旬から3月上旬)に植え付ける野菜は、ジャガイモ

・春(3月下旬ころから)植え付けできる野菜は、白菜、キャベツ、ブロッコリ

・春(4月下旬から5月上旬)に植え付ける野菜はトマト、ナス、ピーマン、キュウリ、カボチャスイカ、ズッキーニ、サトイモ、ラッカセイ

・夏(6月上旬から7月中旬)に植え付ける野菜は、サツマイモ

・夏(7月中旬から8月中旬)に植え付ける野菜は、キュウリ

・夏(8月下旬から9月上旬)に植え付ける野菜は、ジャガイモ

・秋(8月中旬から)植え付ける野菜は、キャベツ、ブロッコリ

・秋(10月中旬から11月下旬)に植え付ける野菜は、イチゴ

・冬(11月上旬から下旬)に植え付ける野菜は、玉ねぎ


ニンニク(中央アジア原産)、ラッキョウ(中国原産)、ジャガイモ(南米アンデス高地原産)、サトイモ(熱帯アジア原産)などは、タネ球や種芋から育てます。スーパーで買ってきたイモやニンニクを植えるより、種芋として売られている物を買ってきたほうが失敗しません。




野菜の種まき


ソラマメ、エンドウ、ニンジン、ホウレンソウ、小松菜、カブ、ミズナ、大根、レタス、ゴボウ、ネギ、オクラ、トウモロコシ、エダマメ、インゲン、ラッカセイなどは種から育てられます。


・春(3月下旬から)に植える野菜は、ホウレンソウ、小松菜、カブ、ミズナ、大根、レタス、ゴボウ、ネギ

・春(4月下旬から5月上旬)に植える野菜は、ラッカセイ(南米アンデス原産)

・春(5月中旬から6月上旬)に植える野菜は、オクラ(アフリカ北東部原産)

・春(6月下旬から7月中旬)に植える野菜は、枝豆(中国原産)

・夏(7月上旬から下旬)に植える野菜は、トウモロコシ(中央アメリカ原産)、インゲン(中南米原産)

・夏(8月中旬から)に植える野菜は、小松菜(地中海沿岸原産)、カブ(地中海沿岸原産)、ミズナ(地中海沿岸原産)

・秋(9月上旬から)に植える野菜は、ホウレンソウ(アフガニスタン原産)、大根(地中海沿岸原産)、レタス(地中海沿岸原産)、ゴボウ(北ヨーロッパ原産)、ネギ(中国西部原産)

・冬(11月中旬から)に植える野菜は、ソラマメ(北アフリカ原産)、エンドウ(中央アジア原産)


畑に直に種をまく場合にも、種に土をかぶせたら上から足で踏みつけておくだけで、水やりはしません。そうすると種と土が密着して土中の水分を吸収します。しっかり踏みつけておくことで、種がそろって発芽します。


種まきは雨が降った直後は避け、靴が泥んこにならないくらいの時期に。これも土が硬く締るのを防ぐためです。


大根や白菜のような大きくなる野菜は30cmおきくらいに3~4粒の種を撒いて、発芽してから間引いて1本を残していきます。


小松菜、カブ、ホウレンソウ、ゴボウなど、それほど大きくならない野菜は、2cm間隔くらいで一列に種を撒いていき、発芽したら間引いて10cm間隔くらいになるようにしていきます。



コンパニオンプランツ


一緒に植えると生育状況が良くなる組み合わせがコンパニオンプランツで、農家の畑でも取り入れられています。


・ネギ類は多くの野菜と相性が良く、他の野菜の病気を防ぐ働きをします。特になす、キュウリ、カボチャなど、ウリ科の野菜に良いようです。


・アブラナ科の野菜(白菜、キャベツ、ブロッコリ、小松菜、カブ、ミズナ、大根)と、キク科の野菜(レタス、ゴボウ)も相性がいい組み合わせ。




害虫を捕食してくれる虫


カマキリ、クモ、ハチ、アマガエルなどは、野菜を食べる虫にとっての天敵。テントウムシもアブラムシを食べてくれます。

昆虫に寄生する菌が、害虫を攻撃してくれることもあります。

こういった生物の捕食関係を利用することで、農薬を使わずに野菜つくりができるようになります。



植物と微生物の共生

有機物というのは、食物連鎖のなかで分解されて無機物に変化していくもの。植物は有機物をそのままでは吸収できませんが、微生物が分解した窒素、リン酸、カリといった無機物を吸収して育ちます。

化学肥料は人工的に作った無機物ですが、成分は有機物が分解されてできたものと同じ。自然な循環ができない鉢植えや小さな庭では、人工的に肥料を加えてやらないと植物は育ちません。

自然な土では、植物が根から出した分泌物を微生物が吸収し、微生物は土の中の養分を運んで根に与えるという共生関係があります。例えばリン酸は、溶けにくく、土の中を移動しない養分ですが、微生物が菌糸を伸ばして運んできます。

微生物が多い土では、地上部の葉がなくとも、根が育ちます。植物にとって有用な菌が多くなると、病原菌などは減りますので、植物が健康に育つ。ちょうど人間の体にとって有益な発酵食品を食べると健康になるのと同じです。健康な根は、健康な体と同様に、免疫力が高まり病気に負けない植物になるのですね。

土の中の有益な微生物を育てるのが有機物。有機物が減ると病原菌が増えてしまいます。落ち葉や枯れ枝などのでできる堆肥が植物を育てるというのは、土の中の微生物を育てて増やすということです。

病原菌を減らすために殺菌剤などを使うと、一時的な効果しかなく、有益な微生物も一緒に殺してしまうことになります。植物の若い芽や葉を摘んで食べる野菜などは、早く出荷をするためにも土を殺菌する必要がありますが、花を咲かせ、実を生らせ、植物を成熟させていくためには、土を殺菌せずに微生物を増やすほうが良いということです。

微生物が増えた土と、そこで育った植物があれば、昆虫も害虫も集まってきます。その虫を食べに鳥が訪れ、鳥のフンが土に還るという食物連鎖の循環がうまく出来上がると、人工的に肥料や薬剤を使わなくてもいい庭となります。

土を耕す雑草の根

雑草と呼んでいるのは人間の勝手で、植物にとってはバラもタンポポも同じ植物。生存競争で勝つのが野性的な雑草たちということです。

根を深く広く張る雑草は、たくましく土の中から養分を吸収して育ちます。温室育ちの花や野菜が勝てるわけがありません。


庭を作る時には雑草を根こそぎ引き抜いたり、除草剤をまいて根絶しますが、植物同士の共生に人間が少し手を加えてやることで、土が健康になります。

本当は雑草にも可愛らしい花を咲かせるものが多くありますし、食べられるものもあります。バラのような花と比べると地味ですし、繁殖しすぎるため広い土地でもない限りは美しくありません。自然の野草はアクが強かったりして調理が面倒です。

雑草がはびこると、バラなどに病原菌をうつしたり、害虫を運んでしまうということもあります。繁殖しすぎた雑草は、地上部だけ刈り取っておけば、微生物に分解されて土の養分ともなるのですが、次々と生い茂るため、刈り取る作業が大変。そのため根こそぎ取ってしまったほうが手入れが楽というわけです。

ただ気長に土を育てて循環する環境を作ることができれば、バラや野菜も丈夫になり、雑草との生存競争に負けない強さを身に着けるようになりますので、雑草だけがはびこるようなこともなくなります。そこまで強く育てた花は美しく、野菜は美味しくなるのです。

早く庭を作りたい、手をかけずに済ませたいのは当然です。ただ最初の2~3年だけ辛抱すれば、強く、美しく、手間がかからない花壇や菜園に育てていけます。 植物が強く育つ土づくり

最初だけ、土を掘り起こしてワラや炭などを敷き、土の中の微生物が増える環境を作ってやれば、徐々に土が育ってきます。

花も野菜もない、ただの土が広がっているだけの庭は、きっと味気なく感じるでしょう。ですが、この作業をするのは秋なので、どっちみち植物が枯れている冬の間に土が育つのを待てばいいだけのこと。


ポット苗を買ってきて庭に植えるのは楽しい作業ですし、パッと花壇ができあがるのでガーデニングの醍醐味をすぐに味わえます。

ガーデニングを始めたばかりの頃は、次々と花の苗を買ってきて土に植え、花でいっぱい、緑でいっぱいの庭を眺めて満足します。

ガーデニングに挫折するのは、次々と追われるように「しなければならない」作業が多すぎて、少しでもサボると植物が枯れてしまい、虫が増え、雑草がはびこり、美しい庭は台無しになった頃。

専業の農家でもないのに、毎日のように水をやったり、時期を見極めて肥料を与え、草を取り、薬剤をまき、花がらをつみ、剪定をし、という作業をし続けるのかと思うと憂鬱になってくるのです。

植えっぱなしで育つ宿根草でも、病害虫にやられたり、雑草がはびこると枯れたりします。ましてや、ひ弱なバラなど一年草のようにしか育てられません。ですから健康な土を育てることの大切さ、あとあとの手入れが楽になるというメリットは魅力的。もちろん全く手をかけなくていいというわけにはいきませんが、作業に追われるようなことはないはずです。


自然農法で有名な福岡正信さん。広い土地があればこそですが、土を耕すことも、雑草を取り除くこともせず、自然にまかせるというのが基本的な考え方です。

#自然農法 #畑 #野菜 #土作り

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